外務省革新派世界新秩序の幻影 (中公新書)

外務省革新派世界新秩序の幻影 (中公新書)の詳細

私たちの通常の戦前外交史のイメージだと軍部が暴走し、外務省などが押し切られて・・・というところになろうが、その外務省の中で積極的に軍部にパイプを持ち、強硬な意見を唱えた一派を描いた大作である。叙述はその中心的人物、白鳥敏夫を中心に進むが精神的原則・理念・哲学などを重視する、と高らかに謳いあげる一方、その言動は時節に流され最後は精神的には混乱しているとしか言い様の無いカオスに陥っていく。こんな人物に言論が流されてしまったのだろうかと驚くとともに、それを受容した時代の空気に、改めて恐怖を感じる一冊である。現在の日本の言論が、後世から見てこのような隘路に陥っていないことを祈る。